第1章 始まり
「…お父様……。」
そう呟くつむぎの刀は、ちょうど綺麗な若草色に染まっていくところだった。
鋼「ああ、髪の毛先と同じで良い色ですね。珍しいですがとても美しい。」
「わ、ほんとだ…。」
つむぎはかざみから刀へ視線を移すと嬉しそうに目を輝かせた。
本当は父や兄達のような緑が良いと思っていたのだが、早くも愛着が湧いて残念になど思わなかった。
か「……………………。」
一方、かざみはまだつむぎが鬼殺隊士として働く事に抵抗を感じていた。
そして、刀の色が変わらなければ良いと思っていた。
か(初めて見る色だが、確かに染まってしまったな。いよいよつむぎは聞く耳を持たなくなるだろう…。)
つむぎは元々聞く耳など持っていなかったが、かざみはそう思うと眉を顰めながら庭へ戻って行った。
鋼(何もおっしゃらないとは…。元風柱であるかざみ様は緑色を期待していらしたのだろうか…。)
「あの、わざわざ届けて頂いて本当にありがとうございました。大切に使わせて頂きます。」
そう言われると鋼蔵は戸からつむぎに視線を戻し、お面の下で微笑んだ。
鋼「そう言って頂けて何よりです。」