第6章 ※やり直し
「私はものじゃないよ。」
杏「それは分かっている。」
杏寿郎はそう答えながら無駄な事をしているつむぎの手を強く握り直した。
そして顔を近付け深い口付けをする。
その魅力を覚えてしまっていたつむぎは腕の力を抜いてしまった。
当然、杏寿郎には好ましい態度だ。
杏寿郎は丁寧に、しつこく舌を絡ませ、無意識に応えてしまっているつむぎを愛でた。
杏(男に負けまいと育ったからか随分と負けん気が強いが、だからこそ滅多に見られない素直な反応が愛らしい。)
そう思うと顔を離す。
つむぎは蕩けた顔を晒した後、ハッとしてから顔を背けた。
杏「ああ、赤い耳を見せてくれているのか。」
それを聞いたつむぎは目を見開き、両手で耳を隠そうとした。
しかし当然杏寿郎は手を離さない。
つむぎの周りにはつむぎの頑固な面を強引に崩そうとする男などいなかった。
つまりつむぎは今、慣れてない事をされている。
何度も何度も拒絶し、暴れているのに、目の前の覆い被さっている男は笑みを浮かべているのだ。
つむぎが返事をせずに黙ったまま固まっていると、律儀に待っていられなかった杏寿郎は腰を揺らし始めた。