第5章 ※逆鱗
杏「では…、どこまで、」
そこで言い淀む。
どこを見られた、触られたかを証明するものなど存在しないからだ。
するとつむぎは肩に置かれた熱く大きな手に自身の手を重ねて微笑んだ。
「杏寿郎くんも知ってるでしょ。しのぶさんが助けてくれた。男の人と二人切りだった時間はそんなに長くなかったよ。」
杏「…………そうか…。そうだったな……。」
杏寿郎は呆然とした様子でそう言いながらつむぎの頬を優しく包んだ。
そして、自然とつむぎの肩に視線を落とす。
杏「俺の方こそ嫉妬に呑まれてしまった。痛かったろう。」
つむぎは優しく肩を撫でられるとこそばゆくて小さく体を震わせた。
「大したことないよ。私もあのままだと気持ち悪かったし。」
杏「…そうか。」
そうしていくつかの問題が解決すると二人は "今" に引き戻される。