第5章 ※逆鱗
「わ、わかったから…、起き上がったりしないで…。」
そう言いながら椅子に座り直したつむぎの横首はもう髪で隠れてよく見えない。
杏「ああ、心配してくれてありがとう。」
場が少し落ち着いて油断したつむぎは、杏寿郎の偽りの表情に気が付けなかった。
杏「つむぎ、怒らないから教えてくれ。昨日は本当に何もなかったのか。様子がおかしかったろう。」
つむぎは一瞬息を止め、そして喉をこくりと鳴らした。
「………な、何もないよ。ちょっと…その、羨ましくて…すぐお祝いできなかったの。ごめん。」
杏寿郎はつむぎが正直に話してくれる事を望んでいた。
そうしたら怒るつもりはなかった。
つむぎの返答に杏寿郎は起き上がってしまった。
「杏寿郎くん!起きたら」
杏「君は嘘吐きなのだな。」
その言葉につむぎは青ざめる。
立ち上がった杏寿郎はつむぎの手首を掴んでベッドに押し倒した。