第5章 ※逆鱗
杏「どうした!何故、」
「お、起きちゃだめだよ!」
つむぎは慌てて杏寿郎の肩を押さえようとした。
しかし、触れる直前で腕が固まってしまう。
手をグッと握ったつむぎは瞳を揺らし、後ずさって戸を振り返った。
その仕草を見てつむぎが部屋から出たがっているのを察した杏寿郎は、慌てて起き上がるとつむぎの手をぎゅっと握った。
「だ、だめ」
杏「どうしたんだ!やはり何かあったんだろう!何故話さない!何故頼ろうとしない!!」
その言葉につむぎが俯く。
すると髪が流れ、横首が顕になる。
杏「…………………………………………。」
杏寿郎は "それ" を見付けると、表情を消しながらつむぎの横顔を見つめた。
つむぎの瞳には怯えが見え隠れしていた。
杏「……つむぎ。話をしよう。」
己を律し、なるべく穏やかな声を出した。
それはどうやら成功したようで、鈍いつむぎは簡単に騙された。