第5章 ※逆鱗
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し「つむぎさん…。」
しのぶの少し驚いたような声が聞こえた。
つむぎは男の腕の中から浮かない顔で頭を下げた。
「お世話になります。足を負傷しました。」
し「分かりました。すぐ具合いを診ましょう。付いてきて下さい。」
男「はい!」
しのぶは歩きながらさり気なく杏寿郎の病室の戸を閉めた。
しかし、つむぎを抱えた男がその前を通り掛かった時、閉めたはずの戸が開いてしまった。
蜜「あっ!朝の、」
「走って!!」
男「えっ!?」
驚いた男が立ち止まる。
男に抱えられている姿など見せたくなかったつむぎは、顔をなるべく伏せながら恐る恐る病室の中を見た。
すると杏寿郎が丁度上体を起こしたところだった。
杏「………つむぎ、どうした。」
杏寿郎は俯いているつむぎにそう訊くと、蜜璃の制止を振り切って床に足を下ろした。