第5章 ※逆鱗
「……これくらいなら大丈夫です。蝶屋敷へ行くには困らないので気にしないで下さい。」
男「いや、付き合います!俺を庇わなかったらこんな怪我負わなかったんですから!!」
「い、良いってほんとに」
男「失礼します!!」
つむぎはグイッと引っ張られ、簡単に横抱きにされてしまった。
その呆気なさに涙が出てくる。
(また…少しも抵抗できなかった……。)
「……………………………ひっく。」
つむぎが泣きだすと男は慌てて胸の中を覗き込んだ。
男「痛かったですか!?」
「おろして…勝手に運ばないでよ……。」
男「………ですが…、」
男は身を捩って胸を押すつむぎの細い腕を見つめた。
つむぎは泣きながらも眉を顰めて悔しそうな顔をしている。
その顔を見て、それが本気の抵抗なのだとやっと悟った。
男「……やっぱり駄目です。俺が運びます。」
そうして護られることを望まないつむぎは、大切に蝶屋敷へと運ばれた。