第5章 ※逆鱗
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「え………、」
昼過ぎ、道着に着替えようとしていたつむぎは鏡を見て固まった。
(うそ…跡ついてる……。)
つむぎが見ていたのは左肩に残る三つの噛み跡だった。
幸い道着を身につければ見えない箇所であったが、それでもつむぎは早朝の事を思い出して瞳を揺らした。
(でも…、黙っていれば……、)
臆病な表情を浮かべるつむぎは、噛み跡の他に散っている華に気が付けなかった。
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その日の夜、つむぎは迂闊にも足に怪我を負ってしまった。
(私の唯一の取り柄が…。杏寿郎くんにも心配かけちゃうな…。)
つむぎの心は重く、重く、沈んでいった。
男「つむぎさん、大丈夫ですか!」
つむぎは声を掛けてきた男をぼんやりと見上げた。