第5章 ※逆鱗
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「………………。」
つむぎはパタパタと涙を溢しながら蝶屋敷の中をデタラメに歩き回っていた。
(あんな出て行き方したら戻れない…。もう今日は帰ろうかな…。無事が確認できただけでも十分だよね…。)
そう思ってくるりと方向転換すると、何かにボスンとぶつかった。
「す、すみません。」
つむぎは慌てて顔を上げると、自身が男隊士の胸にぶつかってしまったのだと悟った。
男「いや、別に大したことねーよ。気にすんな。」
男はそう言って笑ってくれた。
男隊士をずっと避けてきたつむぎはその笑顔を見て、強張っていた体を少し緩ませた。
男「それより五十嵐だよな、お前。ほら、カマキリみたいな鬼が出た時一緒に戦ったろ。あの時お前すごかったよなあ。あんな速いやつ男でも見たことねぇよ、俺。」
「ほんと!?」
褒められ慣れていないつむぎは、杏寿郎が大好きなきらきらと輝く顔を他の男に晒してしまった。
その顔を見た男がギャップから頬を染める。