第5章 ※逆鱗
(甘露寺さん…。もう少し優しく接すれば良かった…。『師範』って呼んでたし、聞いてなかったけど多分弟子なんだろうな…。)
つむぎは自身の嫉妬に恥を覚えた。
し「煉󠄁獄さん、意識が戻って良かったです。では私に出来る事は施しましたので、また何かあった時に呼んでください。それから、鍛錬はまだしないように。お願いしますね。」
杏「うむ!承知した!!」
そうしてしのぶが部屋を出て行くと、杏寿郎の弟子・甘露寺蜜璃がちらちらと二人を見る。
杏寿郎は笑みを浮かべながら首を傾げた。
杏「どうした!!」
蜜「へっ!?」
蜜璃は肩を跳ねさせて赤くなった。
つむぎはその可愛らしい反応を見ると、次第に落ち込んでいってしまった。
(簡単に心変わりする人だとは思ってないけど、こんなに女の子らしい子が近くにいたんなら私のこと久しぶりに見てどう思うんだろう。可愛げないとか…、思うんじゃ…。)
蜜「あ、あのー…、」
(そもそも弟子っていったら…煉󠄁獄家で過ごしてたってこと…?きっと私にとって特別だったあの二週間を簡単に超えて…、)
つむぎは気持ちが溢れそうになるとバッと立ち上がった。
杏「…つむぎ?」
ずっとつむぎの様子を見ていた杏寿郎は、少し涙目になっているつむぎに心配そうな声を掛けた。
「あ…………、わたし…ちょっと出てくる。」
杏「待ってくれ!!」
つむぎは杏寿郎の制止を聞かず、唇を噛み締めながらダッと部屋を出て行ってしまった。
杏寿郎は慌てて後を追おうとしたが、体が動かない事を認めると蜜璃に視線をやった。
すると蜜璃は己に課された事を理解し、満面の笑みを浮かべながら力強く頷いたのだった。