第4章 告げる
「…うん。きちんと隊士とは距離を保ってたから。約束、忘れなかったよ。」
そう言って見上げると、優しい笑みを浮かべている杏寿郎は再びつむぎの頭を優しく撫でた。
つむぎはそんな杏寿郎にほんのり頬を染めた。
杏「君は撫でられるのが好きだな。褒められることも。」
「え…そうかな。」
つむぎが『心当たりがない』という顔をすると、杏寿郎は少し眉を寄せてつむぎの手首を掴んだ。
「杏寿郎くん?」
杏「他の男に褒められてもおいそれとついて行くんじゃないぞ。俺が一番君を愛していることを忘れるな。」
つむぎは杏寿郎の険しい顔付きに喉をこくりと鳴らしてから、ゆっくりと頷いた。
———
杏「では、また会える事を願っている。必ず身を守るんだぞ。」
杏寿郎はつむぎを五十嵐家まで送ると、その門前で別れの口付けをした。
(……………………。)
杏寿郎の唇が離れるとどうしようもなく寂しい気持ちが生まれてしまう。
だが、そうも言っていられない。
つむぎにだって立派な隊士になるという目標がある。
「…うん。杏寿郎くんもあんまり怪我しないでね。」
つむぎはなんとかそう返し、二人は二年前同様に笑顔で別れたのだった。
しかし、一年ぶりに任務でやっと会えた二人だ。
その後もなかなか会う事が出来ないまま年月が流れた。
そして、杏寿郎が十九、つむぎが十八の歳になってようやく転機が訪れた。