第4章 告げる
杏「俺からも訊いていなかった質問があるのだが、良いか。」
そう問われてつむぎは手の甲から視線を上げた。
「…うん。もちろんいいよ。」
杏「恋人は俺が初めてか。」
食い気味に訊かれるとつむぎの手が少し汗ばむ。
(やましい事はないはずなのに、冷や汗をかいてしまう…。なんというか…杏寿郎くんの愛が重い気が、)
杏「初めてではないのか。」
杏寿郎の声が低くなるとつむぎは慌てて首を横に振った。
「も、もちろん初めてだよ。忙しかったもん。」
杏寿郎はじっとつむぎの瞳を観察し、嘘ではないと判断するとにこりと微笑んだ。
杏「そうか!!」
そう言いながら褒めるようにつむぎの頭を撫でる。
杏「この一年は何の問題にも巻き込まれなかったか。」
そう優しく問われると、つむぎは先程までの緊張が嘘のように溶けてなくなってしまったのを感じた。