第1章 序章
嘘でしょ……帳が下りた……恐らく、いや、間違いなく、だ……呪力は感じないけど、それが答え……だから伊地知が気付いてない……。
「伊地知、今すぐ新宿方面に急いで!!帳が下りてる……気配を感じない時点でだ!!」
「は、はい!!」
やっと見つけた……七年間探し続けた……あの日、掴み損ねた手をもう離さない……もう逃がさないよ…… ……お前が僕を嫌ってても、チヨバァの遺言は守らせて貰うよ!
伊地知に急がせ、帳の距離が掴めた時、僕は帳まで瞬間に移動し、帳に手を触れた瞬間、弾かれた……なるほど……何者の侵入も拒否するって訳ねぇ〜……コレ、壊すと危ないかもね……。
オバァ………あの日、特級が襲い掛かってきた……急に顕現した特級呪霊……咄嗟に私を庇って……その時、オバァの呪力が私に入って来て……あの頃と同じ感覚が戻って来た……オバァはもう大丈夫って、私の腕の中で亡くなった……ごめん、私が弱かったから……。
「……待て…よ……お前、呪力が……」
「戻ってるの……知らなくて当然……アンタはこのまま、骨も残すつもりは無いから……」
『アギュウアアァア……!!』
「……アンタに時間掛けてらんないの……『領域展開・霹靂蒼炎』」
『ァアアアアァア……』
あの二人には劣るけど、私は元・特級呪術師……勿論、領域展開も使えるよ?生と死を司る不死鳥……青い炎に包まれた者の生と死の天秤を握る……悟の領域展開にも似た絶対領域……リスクはあるけど多様化は可能……襲い掛かって来た特級を領域内に引き込むと、蒼い炎に包み込まれ、消失した……さっさと終わらせて隠れないと……。
「ッ!ま、待て……話を……」
「時間がなーーーーッ!!?」
『さて………先ずは……』
「……さ……とる……?ッ!!?」
呪詛師・堀部の息の根を止めようと炎を操った瞬間、破られるはずの無い……違う……一人しか破る事の出来ない帳を破られ、上空に現れた蒼い瞳の白髪の男から咄嗟に身を隠す様に気配を消した……。