第5章 憔悴
ゆっくりと堕ちて逝く………シヴァを胸に綺麗な月を見つめながら……堕ちていくのが、スローモーションに感じる……段々と眼が重くなり静かに目を閉じた……。
(…シヴァ……?苦しく無い……?)
〔ああ……〕
海へ入った感覚はあった……なのに、息苦しさは全く無くて、それはシヴァも同じで良かった……海に還るから寒さも息苦しさも感じないのかな?最期にこの海を見てみたい……きっと、月明かりに照らされて、悟の瞳の様な綺麗な色なんだろうな……そう想い、重い瞼をゆっくりと開き始めた……。
月明かりに照らされた、蒼い蒼白な海……それ以上に綺麗な瞳を持ち、白銀の髪が海と月明かりに反射して、神々しい姿をした者に護られてる……海の主人かと思ったけど、彼を私が見間違える訳がない……。
「……さと……る……?」
「ッ!!バカッ!!!」
悟の無下限呪術に護られて、海の中でも還れずに居たことを理解する……どうして、なんで?と混乱するけど、悟の泣きそうな顔を見たら抵抗も何も出来ない……悟は大きく私を怒鳴った後、地上へと浮上し、力強く私を抱きしめた……。
「…ッ…………良か……った……間に合った…」
「………ッ!!?」
「…… 、…… は穢れてなんてない……俺はが居れば……側に居て……ッ……俺を置いて“逝くな”よ……」
「ッ……悟……悟……泣かないで……お願い……私なんかの為に……泣かないで……ごめんなさい……ちゃんと自分を……護れなくて……ごめんなさい……私……私……ッ……」
「もう、俺の前から消えようなんて……居なくなろうなんてしないで…………」
「…ッさと………んッ……」
失ってしまうかもしれないと思った……今、確実に俺の手の中にがいる……地上に上がり、震える手で強く抱き締めた……ただ腕の中にいるの温もりに涙が込み上げて来た……そんな俺をしっかり抱きしめてくれるの頬に手を当てゆっくりと唇を塞いだ……。