第4章 暗転
傑は反撃してくることも無く様子を伺ってる……きっと、この帳……内側からは私は出れないんでしょ?だったら真希だけでも帰さなきゃ……悟、ごめんね……帰りを待ってるって約束したのに守れそうに無いや……。
「……ここからキミは出れない……何する気かな?」
「私は守るべき新芽を守るだけ……」
「それが、呪力のない猿でもかい?」
「……呪術師であろうと非呪術師であろうと……命の重さは同じよ、傑……強きものが、弱きを助ける……それが呪術師よ……」
「…ッ……やっぱり、変わらないな……」
「……人は簡単には変わらない……傑もね……来いッ…“ シヴァ ”!!」
“呪術師”か……結局、私は呪術師なんだよね……きっと傑も変わってない……いつかは気付いてくれるかな?だから諦めないよ?傑が居る未来………。
「……シヴァか……帳を破って逃げるつもりかい?」
「無駄だって言いたい?……じゃあね、傑……」
「……自殺行為だよ?」
「……行くよ、シヴァ……真希、巻き込んでごめんね……」
「ふぅ……行かせなッ!?」
「それは私も同じ……来させない……」
炎の化身、蒼き炎の不死鳥シヴァを具現化し、真希を抱えその背に飛び乗ると、私を捕まえようと動く傑達を囲む様に炎の壁を作り上げた……少しだけなら、時間稼ぎは出来る……。
「シヴァ、真希を無事に高専まで届けて……」
『この帳、が出られない……必然的に私も出れないはずだが?』
「うん、だから私が全呪力込めて叩き壊す……」
『……馬鹿なのか?』
「今は私よりも真希が大事なの……補助監督としてね?普通なら破った後にシヴァに回収して欲しいけど、そうなれば傑の射程圏内……全員が助かる可能性はコレしか無いの……」
『……理解できん……まぁ、それが私の主人か……送り届けたらすぐに戻る……死ぬな?』
「ふふっ、ありがとう、シヴァ……行くよ!!」
シヴァの背に乗り、気を失っている真希の頭を優しく撫で、帳の中心部へ辿り着く手前で呪力を練り上げ全力で拳を振り下ろした……。