第1章 始まり
「ごめんね、クラウド。この怒りっぽい子、ミキっていうの」
「誰が怒りっぽいって?」
「ほら、また怒った」
そう言いながら笑うエアリスを見てると、反論する気も失せてしまった。
私は呆れ気味に肩をすくめると、リビングの椅子に座る。
・・・ソルジャー、か。
頬杖を付きながら、横目でクラウドという人物を見つめた。
エアリスは・・・『彼』の面影を探しているんだろうか。
「ここから七番街スラムは遠いのか? セブンスヘブンという店へ行きたいんだ」
「セブンスヘブン?」
「ああ。ティファがやっている店だ。知ってるのか?」
「ううん、知らない。でも・・・ティファって、女の人?」
「ああ、そうだが」
「ふ~ん」
「・・・何だ?」
「ううん、何でもない」
「・・・? それで、七番街はここからどうやって行けばいい?」
「う~ん、七番街か・・・。少し遠いけど、だいじょうぶ。明日の朝、わたしが送ってあげる」
「・・・あんたが? またタークスに追われたらどうするんだ」
「慣れてるから平気」
二人の会話を聞いていた私は、勢いよく椅子から立ち上がった。
七番街まで送っていく? 冗談じゃない・・・!
「平気なわけないでしょ!? ぜーったい、ダメ!」
「いいじゃない、それくらい」
「よくない! 六番街を通らないといけないんだよ?」
「クラウドがいるもん」
「行きはいいかもしれないけど、帰りはどうするの?」
「じゃあ、クラウド、一人で行かせるの? わたしのこと、助けてくれた恩人なのに?」
「それは・・・」
「まあまあ、落ちつきな、二人とも」
母さんがエプロンで手を拭いながらキッチンから出てきた。
「明日の朝、また考えたらいいじゃないか。疲れただろうから、とにかく今日は家に泊まってもらおう。エアリス、二階のベットの用意をしてきておくれ」
「はーい」
エアリスは少し不満げに頬を膨らませながらも、二階へ上がっていった。