第4章 きもち
雪はそう言うとスマホを取りだしていじり始めた
また変なことをやり始めるのだろうと五条はじゃがバターに集中する
「お、ラッキーだね悟。」
「なにが」
「行くよ、今日。夏祭り」
「は?」
思わず雪の方を見ると雪はスマホを構えて五条に見せる
その画面には大々的にこう書いてあった
『〇〇花火祭り』
開催日は───今日
「電車乗るけどいいよね?行くよ!」
「おい、ちょっと」
「やっぱデートっていったら祭りでしょ!あ、2人も誘った方が良かった?」
「いや、そういう事じゃなくて」
どんどん話を進める雪に五条は慌てる
「行ったことないんでしょ?夏祭り」
「まぁ」
「じゃあ行くしかないじゃんね」
ニシシと笑う雪に五条は呆気に取られたような顔をして手を引っ張られるままに着いて行く
時刻は4時。空は晴天
太陽の下を歩く2人。
後ろからついて行く影がひとつ。
「おお、賑わってるね!!」
「人がいないとこ回るんじゃなかったのか今日は」
「いいのいーの!楽しむことが1番だし」
夏祭り会場、ゲートをくぐり雪は楽しそうに笑う
休日ということもありかなりの混み具合。
人がぎゅうぎゅうだ
「手、つなぐ?」
「誰が繋ぐか」
雪が冗談で言うと予想通りの返事がくる
それにまた笑いながら五条の横を歩く
五条の顔を盗み見るとすこし不機嫌そうな顔をしつつもサングラスの隙間から見える目にはいかにも興味津々という色が浮かんでいた
それを見ると無性に嬉しくなってパンケーキ屋のような気持ち悪い笑いが出そうになるのを堪える
「ね、何食べよっか」
「まだ食うんかよ」
「そりゃそーだよ。夏祭りだもん。チョコバナナにわたあめ、人形焼きにかき氷、たい焼きも焼きそばもある。どれにする?」