第3章 邪魔者
紡side
「げほっ!げほっ!はぁはぁっ!」
金縛りで動かなかった体も急に自由になり、僕は首元を抑え息を整える。
今まで霊が何か危害を加えてくることは無かった。
初めての事だった。
琉己くんに取り憑いている物が何なのか分からない。
『琉己に近づくな』
あの言葉が頭から離れない。
霊はかなり琉己くんに執着しているようだった。
このまま琉己くんと一緒にいたら殺される。
そんな気がした。
恐怖で首を抑える手が震える。
確実に殺されそうになっていた。
殺意を感じた。
「はぁっはぁっ……うぅ……」
堪えていた涙も溢れてきた。
その後も全く眠れず、気がつくと外は明るくなってきていた。
外が暗い間、僕は怖くて布団に包まって朝を待ち続けた。
握っていたスマホが光る。
『おはよ!紡大丈夫?』
稑くんからのメッセージだ。
朝から送られてくるメッセージでこんなに安心したのは初めてだった。
『大丈夫だよ』
震える手でその言葉だけ返信し、スマホを置いた。
今日はバイトの日だ。
朝から夕方までコンビニ。
その後夜まで飲食店。
一人暮らしの為、学校が休みの日は一日中バイトをしている。
寝不足で体調も悪いがバイト先に申し訳ない気持ちで僕は急いで準備をした。
鏡に映る僕の顔は目の下にクマが出来ていてまるで病人のようだった。
ふと首元を見ると手の跡がくっきりと残っていた。
こんなに跡が残るまで首を絞められていたのか。
僕は暑いのにもか変わらず首元を隠すためにハイネックの服を着てバイトへ向かった。