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【R18】消えた君

第1章 不思議な靄


紡(つむぎ)side

桜が舞い落ちる中、僕はお墓の前で手を合わせ目を閉じる。
この町に来るのも何年ぶりだろうか。
最後に来たのは幼かった為ほとんど記憶にない。

「久しぶり。……と言っても覚えてないか。」

2年ほど前に亡くなってしまった従兄弟の墓に話しかける。
本当に突然のことだった。
叔母はおかげで精神的ダメージが激しく通院することになった。
僕は従兄弟の育ったこの町で高校生活を送りたいと思い引っ越してきた。
色々不安だけど、君が育ったこの町を知りたいから。
少しでも会えなかった時間の埋め合わせみたいなものだ。

「そろそろ行くね。今日入学式なんだ。高校生活楽しんでくるよ。」

そう言って僕は立ち上がり、学校へ向かおうと足を進めた。

「っ!!!」

思わず声が出そうになった。
目の前に大きな黒い靄を抱えた僕と同じ歳くらいの男の子が立っていた。
僕は小さい頃から「見えてはいけないもの」が見える。
と言ってもハッキリでは無い。
オーラのように霞んだ様な人影だったり、原型を留めていないような靄だったりする。
稀にハッキリと見えたりもするがほとんどない。
所謂霊感的な物が僕にはあるらしい。

だけど、こんなに大きな黒い靄を見たのは初めてだ。
本能的にわかる。
あれはかなり危険なものだ。
関わらない方がいい。
体が恐怖で硬直する。
上手く動けない。

僕は目を瞑って歩くことにした。
見なければ平気だ。

ゆっくりと歩みを進める。
横を通り過ぎる瞬間寒気を感じたが、彼自体は生きている人間だと分かる。
取り憑かれているのだろうか?
それでも初めて見るような形だ。

何とか通り過ぎ早歩きで学校へ向かった。
少し吐気すら覚えてしまうほどの迫力だった。

もう会いたくない。
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