第1章 悪夢の始まり
「なんで?」
いや。
だから声。
怖いってば。
「まだまだ始発動かないし、いれば?」
「い、いやー」
不意に右手が取られて。
王子があたしを覗き込む。
「なんで目反らすの?」
「そ、そらしてなんかないよー?」
引きつるな羽衣(うい)!!
さっさと退散しなきゃ!!
「楪(ゆずりは)」
嘘。
なんで。
名前。
ってか。
嘘。
待って。
「なんか見た?」
「な、何、を?」
「…………ふぅん」
手。
手!!
王子!!
いつのまにか右手どころか両手が王子に捉えられて。
しかも後ろで一纏めにされてる。
何これ。
なんなのこれ。
「嘘つきはお仕置きかな」
「は?ちょっと王子離し…………」
「暴れると余計キツくなるよ?」
「は?何…………」
ぎゅ、て。
片手で両手が抑え込まれて。
後ろ手だから全然見えない。
のに。
身体だけが身動きできなくて。
バタバタと暴れていれば。
ビーッッ!!って音と共に両手に何かが巻かれていった。
「は?ちょっと王子!!痛い!痛いってば!!」
「楪が暴れてるからでしょ」
だって普通暴れるよね!?
何の理由もなしにいきなり両手ガムテープでギチギチに巻かれたらさ!!
「王…………っ、桜咲!!」
「あー、ちょっとうるさい」
「は?…………ちょ、むぐ!?ん!!んんぅ!!」
両手がギチギチに巻かれたかと思えば。
今度は口にタオル押し込まれて、挙句その上からまたガムテープで口が塞がれた。
しかもそのまま桜咲の肩に担がれる形で運ばれて。
放り出されたのは先ほどのベッドの上。
「好奇心は時に自分を滅ぼすよ」
にこ。
なんて、爽やかに言われても全然嬉しくない!!
なんなのこれ。
今どんな状況なわけ!!