第1章 悪夢の始まり
「あ、あーじゃぁシャワー、借りていいですか」
「ご自由に」
ベッドへと横になりながら背中向けて。
本気で眠そうに。
王子は毛布にくるまった。
「…………お借りしまーす」
なんだか。
イメージとは全然違う人なんだなー。
もっとこう、爽やかな感じかと。
大学で見かける王子はいつも爽やかーって感じで…………。
うん、まぁ。
だよね。
ずっとオンのままじゃ疲れるよね。
家の中くらい、オフっちゃいますよね。
うん。
ガチャ、って、寝室を出て浴室を探す。
寝室を出ると廊下があって。
たぶん突き当たりがリビング。
寝室の目の前の扉は、こっちが玄関かぁ。
すごい。
シューズボックスまである。
でっかい玄関だなー。
自転車も置けちゃうんだ。
少しだけ拝見してから、扉を閉めようとするけど何かが引っかかって扉が動かない。
半ば強引に扉を引っ張った瞬間。
バラバラバラーっとたくさんの何かが落ちる音。
「やば」
慌てて、扉横の玄関に備え付けの収納棚へと戻そうと、手を伸ばした。
「…………!!」
途端に視界に入ってきたものに、思わずフリーズ。
して。
速攻立ち上がって浴室を探す。
たぶんあのふたつのドアのどっちか。
やばい。
これは早めにお暇した方が絶対いい。
あたしの第六感がそう告げる。
シャワーなんて別に、そうだよ満喫で入ればいいし。
服際乾いてれば、長居なんて…………。
「服?乾いた?シャワーは?」
脱衣所の洗濯機の中から着替えを取り出していたら。
後ろから聞こえたのは王子のめちゃくちゃ低い声。
振り返るのも怖くて。
服を取り出しながら慌てて答えた。
「あ、うん、やっぱりこれ以上迷惑かけるのも悪いし、あたし帰るね」