第1章 悪夢の始まり
我が校には王子さまがいる。
なんでも何代前かの総理大臣の孫だとか。
親は海外本社勤務で留守がちなため家政婦さんに育てられたとか。
小学生ですでに大学受験問題を解いていたとか。
まぁ所謂わけのわかんない噂が飛び交うくらいには、王子なわけだ。
イケメンで。
優しくて。
料理も出来て。
お金持ち。
頭も良くて運動も出来る。
絵に描いたような少女マンガのヒーローそのもの。
そりゃモテるのも当たり前ってもんで。
しょっちゅう彼のまわりは人だかりになっている。
のだか。
何故か今日。
今夜。
今。
その王子さまが目の前にいる。
桜咲 天羅(おうさき たいら)。
我が校の王子さま。
目の前ですやすやと眠っているのは紛れもなくそれと同一人物で。
目覚めた見慣れないベッドの上、良く見知った人物の寝顔にしばし呆然。
「…………ん。あれ、起きたんだ。おはよう」
「…………おはよ、うございます?」
目を擦りながら眠そうに、王子が起きた。
おはよう。って。
窓の外真っ暗ですが。
…………いや、薄暗い。
明け方?
え。
待って。
なんであたしここいるんだっけ。
なんで王子のベッドで仲良く一緒に寝てるんだっけ。
「言っとくけどなんにもしてないよ。酔い潰れてる女の子襲う趣味ないから」
「はぁ…………」
酔い潰れ…………。
「!!」
そうだ思い出した!!