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変態王子の恋愛管理

第1章 悪夢の始まり


嬉しそうにパタパタパターって走っていく先輩の後ろ姿なんて、ほんと毎回見慣れてるはずなのに。
なかなかどうして。
慣れないなぁ。
胸が、痛くなる。




この大学には棟がふたつ、ある。

ひとつはここ。
文系の学部が集まる通称教育棟。
そしてもうひとつ。
医学部、理工学部、建築学部、などが中心の通称研究棟。


結弦先輩、黄瀬 結弦先輩と出会ったのはあたしがまだ右も左もわからない新入生だったころ。
同じ建物が二つ並ぶこの大学。
間違えて研究棟に来ちゃったあたしを、結弦先輩が優しく教育棟まで案内してくれた。
そして。
教育棟の院生をしている絵里さんに、あたしを託した。
絵里さん。
結弦先輩よりも2個歳上の、美人で優しい大人な女性。
恋を自覚する前に、失恋するってあんまない経験だとは思う。
それからずっと。
絶賛片思い拗らせ中。




「…………やっぱお酒飲まなきゃ、やってらんないわ」














あれから。
あの公開告白から数日。
いつのまにかあたしは、あの変態王子の彼女になっていて。

「悪い楪、遅れた」
「…………別に待ってない。そもそも約束してない」

当たり前のように、ランチ時になると桜咲は現れる。
カフェにいようが。
裏庭のベンチにいようが。
構内のフリースペースにいようが。
構わず桜咲はにこにこ笑顔を振りまいてやってくる。


「愛されてんね、羽衣」
「むしろストーカー的な?」
「王子になら殺されてもいーなー、あたし」
「だって王子さま、茉莉花さまのご希望叶えて差し上げたら」
「でも俺楪がいい」


「っ」


こいつまた、公衆の面前でぬけぬけと。


「はい楪、お弁当」
「…………ありがとう」

悔しいかな。
こいつ、料理めちゃくちゃ美味いんだもん。
お弁当とかほんと、プロ並み。


「ちゃっかり餌付けされてるよねー、羽衣」
「うるさいな。食べ物に罪はないもん」
「あ、楪お茶は?飲む?」
「…………貰う」
「うん」


お弁当にあったかいお茶まで。
お母さんかな、この人。
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