第1章 悪夢の始まり
きゃぁあああああ!!
「!!?」
人が真剣に考え事してる時に何。
うるさいんだけど。
やけに外野、うるさい…………。
「聞いてた?楪」
「は?今それどころじゃない…………」
不意に視界に入った茉莉花がぽやんと顔を赤くしてるから。
一瞬意味がわからなくて思考停止。
何。
なんかみんな、こっち見てる。
「付き合って欲しいって言ったんだよ楪」
「ああ、そう。無理。はい終わ…………?」
え。
今。
「はぁああ?」
「返事は?」
「あんた公衆の面前でなんでこと言ってんの?馬鹿なの!?」
「だって楪がここで言えっつったんじゃん」
「ぐ…………」
こいつ。
また笑ってるし。
絶対わざとだ。
わざと公衆の面前で公開告白してるんだ。
外堀りから埋めて逃げ道なくす気じゃん、これ。
「ちょっと羽衣!!いつのまに王子とそんな関係になったのー?」
「なってない!!」
「え、傷付くそれ」
「〜〜〜!!」
演技派だなまじで。
「…………ちょっとこっち!!」
ぐい、と桜咲の腕を引いてカフェをあとにすれば。
後ろから押しつぶされそうなほどの、甲高い悲鳴。
…………勘弁してよもお。
「何よあれ!!」
人気のない場所が咄嗟に思い付かなくて。
男子トイレの個室を閉めて、桜咲を壁ドンした。
「…………こんなところ連れ込むとか、楪ってけっこう大胆なんだな」
「真面目に!!」
こっちだって不本意だわ!!
仕方ないじゃん。
女子トイレには常に誰かしらいるんだもん。
「真面目だけど俺」
「どこら辺が」
「だから俺さ、普通のセックスじゃ全然勃たないんだよね」
いらないってそのカミングアウト。
昨日も聞いたし。
「で」
「で、楪ならちゃんとセックスできたから」
「それだけ?」
「あと相性とか♡」
「…………だいたい。あんたならその歪んだ性癖込みだとしても、相手してくれる女の子ならいっぱいいんじゃん。」
「まぁそうなんだけど」
…………なんかムカつく。
「だって喜ばれたら萎えるし」