第16章 貴族
やって来ました、お城です!!旅行客の様にキョロキョロしてしまう私。しっかりリューさんに手を引かれ、案内して貰っています。
ただ一つ、気になるのは城勤めのメイドさんたち。すれ違う度に、チラチラとリューさんに視線を投げているのだ。全く以って面白くない。
何気なく外を見ると、華美なドレスを着た令嬢たちがお茶会をしているのが見えた。その中で一際、品のある令嬢が私たちに気付いた。
席を立つと、令嬢らしからぬ速さで私たちに近付いて来た。正しく言うと、リューさんにだが。分かりやすく私を突き飛ばそうとして来たが、それは叶わなかった。
そして、繋いだ手を見て怪訝な顔をする。お目当てはリューさんらしい。
「その手を離しなさい。」
いきなりの命令口調だ。しかし、リューさんはこれ見よがしに私の手を口元に持ち上げキスした。
「放しなさいとこの私が言っているでしょう!!」
「くだらない。」
えっ、くだらない?今、リューさんはそう言ったの?
「相変わらず、この私にもそんな物言い。許しませんよ。」
「どうでもいい。興味ない。」
何故、煽る?
ハラハラしたままリューさんを見る。いつものリューさんではない。でも、相変わらずって言った?
「一々、声を掛けて来るな。目障りだ。」
「なっ!?この私が声を掛けてやっていると言うのに、何って事を言うの!!」
ツーンとしたままのリューさん。
「さぁ、エイリン。この先に良い所があるんだ。」
「待ちなさいよ、この私を無碍にしてもいいと思っているの?」
やたら、この私と言う。どの私なのだろう?
「この私の言うことを聞きなさい!!」
「文句があるなら、ノーチェ様に言え。」
扇子で口元を隠しているが、歯ぎしりが聞こえる。大層、ご立腹である様だ。
「先日の返事は撤回しなさい。この私が、お前を選んでやったのです。言う通りに、我が公爵家に婿入りしなさい。」
ん?公爵家に婿入り?驚いてリューさんを見れば、心底どうでもいい表情を浮かべていた。えっ、求婚されてたの?
「お前の能力だけは、お父様も買っているの。だから、この私の伴侶としてあげると言っているのよ。」
「私はもう少し胸が大きい女性がいい。」
えっ?胸が大きい女性?今、そう言った?
あ、何か思うところがあるの?令嬢の顔が真っ赤になっている。お胸はそう無い様には見えないけど。