第15章 食事とお酒と媚薬
執事のネルさん、メイドのテイラーさんにはお子さんがいる。王都で食堂を商っていて、閑古鳥が盛大に鳴いているらしい。
というのも、最近、近所に新しい食堂が出来たそうだ。美人がお給仕してくれるとあって、王都の男性がこぞって利用しているらしい。
そして何故か、リューさんとそのお店に食事をしに行くことになった。リューさんは、敵情視察と言っていたけれど他にも理由がありそうだ。
お店はそこそこ広く、確かに美人の女中さんが案内してくれた。ただ、リューさんにウィンクしてはここぞとばかりにお近づきになろうとするのが見え見えで私は少々ご立腹だった。
仕方ないじゃない・・・ヤキモチ妬いてしまうのだもの。ただ、リューさんは全然関心がないようだったのがせめてもの救い。
美人は数人いた。その中でも、リーダー格の女中さんがオーダーを取りに来た。必要以上に前のめりになっては胸元を見せつけ、リューさんに熱い視線を向けている。
リューさんがオーダーしてくれたのだけど、何故に去り行く時に投げキッスをしていく必要がある?
「そう拗ねるな。ただ可愛いだけだぞ?」
「だ、だって・・・。」
「昨晩、私が足りなかったか?」
言葉の意味を理解しては、顔に熱が籠る。
「もうっ、リューさんったら。」
「あまり疲れすぎて、悪酔いするといけないと思って自重したんだ。」
「悪酔いって、お酒を飲むの?」
心配していたけれど、運ばれて来たのは甘めで軽いお酒だった。うん、美味しい。食事も王都では代り映えしない煮込み料理。特別何かが優れている訳ではない。
つまり、お客のお目当ては美人。ある意味計略だと言えるだろう。そして、上の階には部屋があるらしい。
「・・・リューさん、上の階って・・・。」
「そういう意図もあるのだろうな。」
そうか、そういう意図が・・・。確かに、上の階へと行ったまま二人は帰って来ない。勿論、その片割れは女中さんだ。
だから、さっきからリューさんは女中さんたちの注目を集めているのだろう。増々、面白くない。
「エイリン、悪いが切り上げていいか?」
「えっ?あ、はい。」
リューさんが立ち上がると、美人たちが駆け寄って来た。いつもと変わらないリューさんの表情なのだけど、女中さんたちは怪訝な顔をしている
何かあるのだろうか?