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清算は断罪と共に

第10章 落ちた聖人


背筋がゾっとする微笑みを浮かべ、俺に容赦ない言葉を浴びせた。そして、俺は自分が置かれた状況を正しく把握した。

ずっと人助けをしてきて、誰もが俺の聖人だと言っていた。なのに、この体たらく。どこで間違えた?

「俺自身の手で、人助けをと言われたんだった・・・。」

俺は情報だけ得ては、直ぐに周りに丸投げしていた。あの時もそうだ。エイリンが助力するだけでいいと思っていた。俺は俺が人助けをしているのだと錯覚していた。

でも・・・本当は、全てが俺だけの力ではなかった。


そう言えば、父さんからも言われていたんだった。エイリンを大事にしろと。父さんは、いつも何かを気にしていた。それは、決まってエイリンのこと。

理由は分からないけれど、いつだってエイリンを・・・。最初は、俺がエイリンのことを想うのを反対していたのに。いつの間にか、婚約することを反対しなかった。

過去のことを思い返せば、不可解なことに気付く。

「・・・そうか、あいつもエイリンを手に入れたがってたんだ。俺はいい当て馬扱いか。父さんも、どうせ婚約は破棄になるからと。可哀想なヤツだな、エイリンは。周りの掌で踊らされてるんだから。」
「何も問題はありませんよ。この私が、エイリンの傍に居るのですから。」
「お、お前は・・・。」
「私は正攻法で、エイリンを手に入れます。ですから、何も可哀想な事はありません。私が自ら愛しみ守り心を捧げるのですから。貴方の役目は終わりです。さて、貴方の処遇が決まりました。ここで、一人でお勤めして頂きましょう。良かったですね、重労働も重い処罰もないのですから。では、ごゆっくり。」

悪魔はそれだけ言って消えた。仲間たちは牢から出され、重労働の刑となった。俺は、俺だけは・・・この牢で一生を過ごす。

何とも言えない心の中の苛立ちや悲しみなどが爆発し、冷たい牢獄で俺の鳴き声だけが響き渡った。そして、このまま俺が日の目を見ることはない。

重労働も極刑も、エイリンの慈悲で免除された事を俺は知らない。飼い殺しのまま、この牢で生涯を終えたのである。
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