第8章 計画
ノックの音と、人の声で目が覚めた。扉を開けると、目の前にいたのはアンドリューさんだった。
「食事の準備が出来る頃ですから、ご一緒にいかがですか?支度が出来ましたら、下へおいでください。」
「ありがとうございます。」
着替えは、アンドリューさんが指示してこの家の唯一のメイドであるテイラーさんが用意してくれていた。華美ではないけれど、質のいいワンピースだ。
身支度をしてから、下へと行くと人の声が聞こえて来た。そっと部屋を覗き込むと、金髪紫眼のイケメンとアンドリューさんがいた。
「おや、キミがエイリンかな?」
「お、おはようございます。はい、私がエイリンです。」
「初めまして。私はノーチェ=アース。リューの友人だよ。」
「ご冗談を。私の主でこの国の王太子ではないですか。」
ニヤニヤしては、アンドリューさんを見ている王太子。
「友人だっただろう?」
「学生だった頃の話しです。」
どうやら、とても仲がいいみたいだ。
「今から、食事なのですが?」
「テイラー、私の分も頼むよ。」
どうやら、一緒に食べるみたいだ。
「あ、では、先にお二人でどうぞ。私はテイラーさんのお手伝いをして来ます。」
厨房へと向かうと、テイラーさんがせっせと料理を作っていた。シンプルなオムレツに温野菜を合わせたものと、焼き立てのパンと野菜スープが献立らしい。
慌ててアンドリューさんが引き留めに来たけれど、私はお世話になったのでとそのままお手伝いさせて貰うことにした。
元々一人暮らしだったし、家事はそう嫌ではない。流石、王太子の執事をしているだけあって食材も豊富だ。手早くスパイスをブレンドしたドレッシングを温野菜に掛けたり、フワフワのオムレツを作った。
始めは遠慮したのだけど、王太子とアンドリューさんと共に食事をすることになった。
「この味は初めて食べるが、美味しいな。エイリンの案かい?」
「はい。」
「オムレツがフワフワです。それに、このトマトソースもいつもと味が違う。美味しいですね。」
気に入ってくれた様で、ホッと一安心。食事の後、客間に行き私たちは腰を落ち着けた。相変わらず、王太子も同席している。
「では、経緯を話しましょう。」
そう切り出したアンドリューさんは、抑揚のない声色で言葉を並べた。その内容は、どれも驚くことばかりだった。