第18章 一つずつ丁寧に
私も基本はテレポート移動だ。エイリンとのデートで無ければ、魔法一つで移動する。時間が惜しいからな。故に、どこかで待ち伏せされていても会うことはない。
そして、城にいる時は尚更だろう。幾ら高位の冒険者だとしても、この王子の執務室には来られない。
「あ、そうだった。リュー、あの紅蓮の牙のことだけど。面倒だから追放しておいた。」
「ノーチェ様の影(密偵)からの情報での判断ですか?」
「不要だと判断しただけ。」
そう言っては笑うノーチェ様だが、目は笑っていなかった。ノーチェ様も、エイリンの薬には価値を感じているからだろう。
「命令なんて無粋な真似はしたくないけど、早々に結婚してくれない?プロポーズはしたんだろう。」
「・・・そうですね、尽力してみます。」
何処かの面倒な案件があるのだろう。
だから、正直に話そう。エイリンには、私の心の内をさらけ出してしまおう。
でも、中々思った様にはいかなくて・・・あの紅蓮の牙は、ノーチェ様の追放に焦ったらしく、我が家に突撃してきた。この状況を作り出したのは、間違いなくノーチェ様だ。
我が家の応接室で横柄に足を組み、私を見下す眼差しを向けてはエイリンの処遇を決定付ける紅蓮の牙のリーダー。お前に決定権はないのだがな。
その傍では、ヒーラーが苦い顔をしている。決裂するにはそう時間は必要なさそうだ。
「エイリンは何処にいる。連れ帰るから、差し出せ。」
「ここにエイリンはいませんよ。」
「隠すと身のためにならないぞ。居場所を言え。」
「隠すつもりなどありません。今、王太子様に招かれており城中にいます。」
おや、流石に王太子と聞いて驚いたか。その王太子からの追放だものな。
「会いたいのであれば、城にいる王太子様へ謁見の依頼をしては?暫く滞在するそうだと伺っております。」
「呼び戻せ。」
「私にその権限などありませんし、貴方に命令される覚えもありません。さぁ、居場所は伝えました。どうぞ、お引き取りを。迅速に行動しないと、追放されているにも関わらずこの町にいると捕縛対象となりますが?」
苦い顔をしたまま一向に動きそうになかったので、私自ら追放しておいた。荷物がまだ宿屋に置きっぱなしになっていた様だが、私の知ったことではない。
私は私の敵に容赦はしない。そして、エイリンはというと薬師として城でレクチャー中らしい。