第2章 美しい神様と近づく心
「ならばきりがついたら来なさい。お茶を飲みながら紹介でもしよう」
こそっと紙様を見ると下唇を噛んで耐えているようだ。
そんなザマスの背をさすると、チラリとこちらを見るが何も言われず拍子抜けしてしまう。
凛と背筋を伸ばして歩く紙様の後ろ姿を見ながら、新しく加わる人物に思いを馳せる。このザマスのことだから、きつく当たるのに違いないのでどうホローするかと頭を巡らせていると、不意に紙様の歩みが止まる。
「どうしました?」
「何故だ、何故また人間を……人間など1人で十分だ」
「大丈夫ですよ。時がくればいなくなりますから。少しの辛抱です」
勇気づけようとしたはずなのに何故か目を逸らされた。
いや、なんで?
ゴワス様のいるところへ向かっている途中、微かに聞こえてくる声に聞き覚えがあった。四角いテーブルに3人の影があり、1人はもちろんゴワス様で、ゴワス様の向かい側に座っているのは2人の女性だ。
「おお、ザマス、天月さん」
「天月!!」
「……」
驚きに目を見開いて立ち上がったのは、富崎友香である。不安そうに顔を歪ませて今にも泣き出しそうな彼女の背をさすっているのは、横山日夏である。
そんな2人の様子を見たゴワスは、視線を彷徨わせる。
「私たちは席を外すから3人で話しなさい。ザマス行くぞ」
「.………はい」
なんと言っていいのかと迷いながら立っていると、日夏に背を押されて友香の横に座らされる。
「それであの時、何があったの?」
「……」
「天月ちゃん教えて、私たちも知る権利があるのです」
場を和ませようと軽い口調で話す。そして日夏につづき友香が言う。
「そうだよ。一様私たちも依頼の内容を聞いたから」
「大丈夫?あの人はまだ大丈夫なの?」
不安に発した言葉は2人の顔を曇らせる。
「……それは」
「今は大丈夫。あくまで今は……だけどね。でももう時間の問題」
日夏の言葉に目を伏せて、重い口を開いた。
「……ごめん。答えたくない!」
2人はその怯えたような天月に困惑するが、日夏は目を閉じて頷き目を開いた瞳の奥に優しい色を宿していた。
「わかった。もう何も聞かない。天月ちゃんの話したい時に教えて。はいじゃあ、この話は終わりです。それじゃあ呼びますか………、あのーすみませーん」