第3章 壊れた幸せ
仕事の最中、ゴワス様がザマスを呼ぶ。
何があったのか気になり手を止めて2人の会話を聞いてみると、どうやら第7宇宙の天使ウイスと破壊神ビルスが人間である孫悟空を連れて来たらしい。そしてザマスと手合わせをさせたいと。
思わず息を詰まらせる。
きっと悟空は一旦未来から帰ってきて、あの偽物悟空の正体を知りたいとザマスに手合わせをしかけるが、悟空には負けてやろうという心がない。だからザマスの怒りはまた、増幅するのかもしれない。
「………ゴワス様!!」
急な大きな声に2人が振り向くと、ザマスは目を見開いて動揺する。
「天月」
「天月さん?」
「……………」
人間と手合わせをするのは、間違っている。
神様は、人間にそんなことをしてはいけない。
どうせ相手は弱いからやめておいた方がいい。
どう言おうか考えていると、不意に手首を掴まれた。
「行くぞ」
「え!」
「お前も見たいのだろう?」
「おお。なるほど」
ついザマスの手を振り払うと、怪訝に眉を寄せる。
「いえ、私はその……殴り合いは見たくないので、ここで待ってます」
「天月?」
「そうか、すまない少しここを空けるぞ。それではザマス行こうか」
「…………はい」
心配だという色を残しながら、ザマスは背を向け歩き出す。
……
こっそり遠くで見てみると、悟空が超サイヤ人になっており、ザマスに殴るところだった。
力強い攻撃でザマスを押していく。
とうとうザマスが尻餅をつき、悟空の拳が振り下ろされる瞬間、ウチは落ちていた石に気を溜めて悟空の横っつらに投げ込んだ。
悟空に当たったことを確認したウチは、さっさと立ち去った。
バランスを崩した悟空は地面に倒れ込み、打ちつけた尻に手を当てて唸めく。
「ハハハ。ザマス様、やっぱすげーな。オラ一本取られたぞ」
黒髪に戻り、二パーっと笑う悟空にザマスは戸惑う。
「ねえ、ウイスなんかおかしくなかった?」
「うーん、よく見えませんでしたねえ」
ビルスは目配せをして悟空を呼ぶ。
「よし、悟空。帰るぞ」
「もういいんか?」
「ああ」
「また戦おうぜ」
ザマスは怒りの表情を浮かべ、手で気の刃を作るがゴワスの一括に力を抜いた。