第2章 可愛さ余り過ぎると、憎さなくなる?
万次郎が右隣、何故か春千夜が左隣を陣取り、私のお弁当のおかずを指定する。
万次郎とこうやってお昼を食べるのは、ほぼ毎日なので少し多目に用意しているから、困るわけじゃないけど、春千夜まで参加するとは想像していなくて、困惑してしまう。
この態度の変わり様に、何故万次郎もドラケンも、場地や千冬君までもが何も言わないのか。
仲が悪いのはさすがに知らなくても、こんなにベッタリなのはおかしいと思わないのだろうか。
今も、何故か私の方を向いて口を開けている。
推測するに、多分口に入れろと言う意味なんだろう。
「春千夜は、甘えん坊さん?」
「あぁ? 何言ってんだ? いーからさっさとくれ」
更に近づいて口を開ける春千夜の口に、おかずを入れると満足そうにもぐもぐと食べている。
その後も何度か同じ事を要求される度、私も拒む理由がないので、続ける。
そのうち万次郎にずるいと、春千夜が蹴られてしまったけど、それ以外は平和にご飯を食べ終わった。
他愛ない話をする、お世辞にもガラがいいとは言えないのに、無駄に顔がいい面々に囲まれている私に、物凄く熱い視線が送られている。
「えっと……何? 凄い見てくるじゃん。やっぱり変だよ? どうしたの?」
「なぁ、お前って……好きな奴、いんの?」
青空広がる、こんな昼休みの平和でほんわかしている状態から、何故そんな質問が出るのだろうか。
「突然何?」
「いーから、答えろよ」
物凄い真剣な顔で、グイグイ近づいてくる春千夜が聞く。
綺麗な顔が目の前にあり、長くバシバシの睫毛が瞬いているのがよく見える。
「……い、いない、いないからっ……離れてっ……」
「そりゃぁ、好かれてるとは思ってねぇけど……俺が近づくの、そんな嫌かよ……」
目を逸らし、少ししょんぼりして体を離す。
確かに、彼の今までの態度はいいものとは言えないけど、彼を嫌いだとは思った事はない。
「私春千夜の事、嫌とか、嫌いなんて思った事ないよ?」
「は?」
「確かに冷たかったし、暴言吐くし、いい人なイメージないけど、嫌いとか苦手とかなかったよ」
万次郎の事大好きで、崇拝しているからこその態度だと思っていたし。
「春千夜は愛情深いよね。それだけ愛されるなら、春千夜の彼女になる人は幸せだね」