第6章 二人、同じように
毎回思うけどなかなか激しい独占欲だ。
「春はほんとに私の事大好きだよね」
「……当たり前の事言ってんじゃねぇよ」
少し頬が赤い気がする春千夜の首に巻き付けた腕に、更に力を入れて顔が近づいた。
「春ちゃん照れてるー。可愛いー」
「っ……テメェ、あんま調子乗んなよ」
「ふふっ、ごめん。春、怒らないで」
春千夜の頬に口付ける。
屋上から階段を少し降りた踊り場に降ろされ、壁に追い詰められる。
「んっ……」
少し乱暴だけど、体の熱を一気に上げてくるキスに、唇が当たった瞬間からもう既に頭が痺れ始めている。
息吐く暇もなく、春千夜の激しい動きをした舌が、荒々しく口内で暴れ回る。
「はぁっ……ンっ、ふぁっ……ぅんンっ!」
私の脚の間に春千夜の脚が差し込まれ、下着越しに膝が擦れて体が跳ねる。
「春っ……ダメっ……」
「あ? 煽ったのお前だろーが。エロい顔しやがって」
いくら人がほとんどいないからって、こんないつ誰が来てもおかしくない場所でするつもりなのか。
それはさすがにマズい。
「春っ……ここじゃっ、ダメっ……」
力いっぱい春千夜の体を押す。
想像通り物凄い不機嫌な顔が、何か言いたそうに私を見下ろしている。
手首を掴まれ、手を引かれて歩き出す。
「春、何処行くの?」
「人が来ねぇとこ」
どうしてもするつもりなのか。
「そんなにシたいの?」
「勘違いすんな。ただシたいんじゃねぇよ。“お前を”抱きてぇんだよ」
凄く無愛想に言ってのける春千夜の言葉に、ときめいてしまった。
愛されるとこんなにも幸せなんだ。
兄が愛してくれた以上に、そして両親のくれなかった愛情を、彼が深く重い愛をくれる。
こんなに愛情をたくさんくれる彼に、私が返せるものは一つ。
今の私の考えの中で、自分自身しかないと思った。
春千夜の掴む手に触れてその手を離し、振り向いた春千夜に抱きついた。
「春千夜。ありがとう」
「は? 何だ急に……」
「好きだよ」
一気に真っ赤になった春千夜が可愛くて笑う。
「私を全部春千夜にあげるから、重くても縛ってでも、ずっと愛してね」
頭をくしゃりと撫でられる。
「嫌っつっても逃がすかよ」
言って優しく笑った。
[完]