• テキストサイズ

君中毒【東リべ夢】〘三途春千夜夢〙

第2章 可愛さ余り過ぎると、憎さなくなる?




呆気に取られる三途君の前から、寮へ戻る為に体をそちらへ向ける。

そんな私の手首を彼が素早く掴む。

「まだ何かあんの? 今はあんたの暴言に付き合える気力も体力も残ってないのよっ! ほんともういい加減にしてよっ! 嫌いなら放って置けばいいじゃんっ! 消えて欲しいなら消えてやるわよっ! これで満足っ!?」

突然手首が引かれ、また三途君の前に立たされる。

本当にもう解放して欲しい。さすがに彼の攻撃に、これ以上耐えられる自信も余裕もない。

「お前、マジで彼氏いねぇのか?」

「っ……だから、いないって言ってる……何なのよ……」

「お前、今日男と抱き合ってたじゃん。デコにキスも……」

もごもごと言う三途君の言葉を考える。

なるほど、そういう事か。

「あー……あれは兄よ」

「あぁ? 兄貴とんな事普通しねぇだろっ!?」

「普通なんて知らないわよ。それに、うちの家庭の事なんて、あんたには関係ないでしょ」

母の事があってから、兄は私の事に関して過剰な程敏感になってしまっている。

例えそれが他の人から見れば異常でも、私達には普通なのだ。

そうやって、二人で寄り添って生きて来たんだから。

私の手首を掴んだまま、胸の辺りの服を掴んで目を泳がせている三途君。

涙はすっかり引っ込んで、だいぶ落ち着いて来た。

落ち着くと、視界がはっきりしてくる。マスクで半分隠れた三途君の頬が赤くなっているのに気づいた。

私は拒否されるのを覚悟して、三途君の顔に自由な方の手を伸ばす。

少しピクリと動いたものの、拒否される事はなくて。

頬にゆっくり触れた。

「痛かった? 殴って、ごめんなさい」

いくら腹が立ったからって、殴るのはよくない。完全に私の未熟な感情のせいだ。

私の言葉に、驚いたみたいな顔をする。

「おぉ……いや、こんくらい大丈夫だ……」

さっきまでの威勢は何処へやら。三途君はすっかり大人しくなってしまった。

静寂が二人を包む。

この時間は一体何なんだろう。

「あの三途君? その、もうそろそろ帰ってもいいかな?」

「え? おお……」

私が言うと、まだ何処か上の空な三途君が歩き出す。私の手首はまだ掴まれたままだ。

振り解くのも何か違う気がして、そのまま歩く。
/ 40ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp