第5章 加速、そして……
〔春千夜side〕
当たり前みたいに、マイキーの傍にいる女。
。
マイキーだけじゃなく、他の奴等もみんなそいつを気に入っていて、俺はそんなアイツが嫌いだった。
女はうるせぇし、すぐ泣いて面倒だし、弱ぇし、くせぇから好きじゃねぇ。
俺は出来るだけ関わらないように、に冷たく当たっていた。
あの夜もそうだった。
マイキーの傍からアイツを引き離す為に言った言葉に、初めては怒りを見せた。
どれだけ冷たく、どれだけ酷い言葉を言っても、反発なんてしなかったが、俺の頬を叩いて、泣いて、睨みつける。
それが、俺の心臓に衝撃を与えた瞬間だった。
鼓動が、早くなる。
何でなのかは全然分からない。ただ、その日からが気になって仕方なくて、いつの間にか、自分だけのものにしたくなっていた。
「俺はドMかよ……」
女にそんな感情を持った事は一度もなくて、なのに戸惑うよりが欲しいという思いの方が強くて、いつもマイキーが俺の一番だったのに、いつからかを最優先に考え始めていた。
学校でそんなにやる事があるのかと聞きたくなる程に、忙しなく動き回るは、生徒会にも所属していて常にチョロチョロしている。
更に、嫌になるくらいモテる。何度か目撃していた、男からの告白を受けているのを、黙って見ていられるわけもなく、突入して観客がいるのも構わずキスをした。
誰かと唇を合わせる、ましてや女となんて考えもしなかったのに。
泣きながら怒るに、謝りながら可愛くてたまらなくなる。
人に、女に謝るなんて、泣き顔を可愛く思う事があるとは。
俺から逃げる癖に、俺の傷を気にして近寄ってくる。
怖がる奴等ばかりの中で、俺を子供みたいに扱って、何も言わなくても感情に気づいてくる。
俺がから離れられなくなるのに、時間なんていらなかった。
ずっと一緒に行動していたのに、珍しく別行動していた時にそれは起こった。
完全に、俺の油断だ。
マイキーのスマホに、生徒会長の泣きそうな声で連絡が入った。
『さんがっ!』