第5章 加速、そして……
〔春千夜side2〕
言われた場所に辿り着いて、目にした光景に体の血が煮え滾る。
なのに、何処か冷静で妙に心が静まり返っていた。
殴り続ける手にも痛みなんてなくて、ただ体が熱くて血が沸き立って、目の前が真っ赤になるみたいで。
ドラケンに止められても、気は治まらなくて。ただ、言われた言葉でふとを見る。
何処かぼーっとしながら、こちらを見ている目と目が合う。
立ち上がって、一直線にの元に向かって手を伸ばしたけど、寸前で止める。
汚れた自分の手を見て、苛立ちが蘇った。
なのに、はその手を気にする事なく掴んで、自らの頬に持って行く。
笑おうとして涙を流して、子供みたいに泣くを、強く抱きしめる。
寮まで送り届けた後、身を引き寄せて言った俺の問いに、少し苦しそうな、でも何かを求めるみたいな顔で言う。
「春千夜を、好きになりたい」
何度も絡ませる舌が、ぎこちなくて初心者だと物語る。
「……下手くそだな……」
笑う俺に、が息を切らしながらこちらを見上げる。
「春千夜が、教えて?」
細められた目の奥が、揺れて甘く誘う。
この場で組み敷いて、全てを喰らい尽くしたくなる衝動を必死に抑える。
一時の感情で、嫌われたくないと思ってしまうくらいには、本気なんだろう。
その日から俺はを『監禁』という言葉を使って、に見えない鎖で縛り付けた。
特に嫌がる事もなく、何気に嬉しそうなのが気になった。
やっぱり変わった女だ。
授業を受けるのもダルくて、マイキー達と一緒に屋上でダラダラしていて、たまたまフェンスにいた俺の隣に場地が来る。
「そういや三途。お前今日の四時間目、女といた?」
「あ? 女……あぁ、クラスの奴だな。つーか、何で場地がんな事知ってんだよ」
「体育で走ってたら見えたんだよ。仲良さそうにしてたじゃん。他の女によそ見してていいのか? とはまだ付き合ってねぇんだろ?」
「はそれ……」
「あぁ、ガッツリな」
見られていたのか。でもアイツがそこまで気にするかと疑問に思う俺に、場地が続ける。