• テキストサイズ

君中毒【東リべ夢】〘三途春千夜夢〙

第5章 加速、そして……




場地の質問に首を横に振る。

「ううん、まだ」

「……は? え? セフレ? 痛ってぇっ! 殴んなよっ!」

「変な事言わないでよ。そんな関係じゃないし、まだ体は許してません」

場地の言う事も分かる。

確かに、ほとんどの人がそう思うだろう。多分、私も他人の事ならそう思っただろうし。

「意味分かんねぇ」

「はっきりしない、私が悪いんだけどね」

不思議そうな顔で首を傾げる場地に、私は苦笑する。

「噂をすればだ。珍しいな、三途がお前以外の女といるとか」

マスクをしているけど、少し顔を赤くして、楽しそうなのは分かる。

そうだよね。自分の気持ちに応える事もなく、ただ甘えるだけ甘えている女よりはいいだろう。

彼の為には、一緒にいない方がいいのかもしれない。なんて、思ってしまう。

「おい……、大丈夫か?」

「へ? 何が?」

「いや……泣いてっから……」

何で泣いてるのだろう。

私は春千夜から離れたくないのか。

ズルいと思われても、私は彼に求めていて欲しいのだ。

「私、最低だ……」

春千夜の気持ちに胡座をかいて、私だけを見ていて欲しいと贅沢な事を考える。

何とか体育の授業を受けた後、午後の授業を初めてサボった。

体育館裏の階段に座り、ただ空を見る。

連絡はしていないから、春千夜が私の居場所を知るのはGPSで見るしかないけど、さっきそれを切った。

約束を、破ってしまった。

「怒るかな……」

そんな事を思いながら、苦笑する。

授業中の校舎は静かで、体育の授業をしている声だけが微かに聞こえる。

私は、どうするべきなのか。

「春千夜の事を考えたら、離れた方がいいんだろうなぁ……」

離れられるのか。私にそんな決断が出来るんだろうか。

春千夜の気持ちが自分に向いていると、余裕があったのかもしれない。他に気持ちが行くなんて、有り得ないって。

これは、慢心だ。

甘えてばかりで、わがままで、嫌になる。

「帰ろ……」

スマホはあるし、特に必要なものは入ってない荷物を、わざわざ取りに行くのも億劫で、身一つで学校を出た。

部屋に着いて、物置へ向かう。

物置なのに春千夜の香りがいっぱいで、誘われるように服に手を掛けた。
/ 40ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp