第4章 それでも傍に
委員会へ行く事を、春千夜へスマホで連絡をする。
行動を必ず逐一報告するのと、GPSを付けるのを条件に自由を手に入れているなんて言えないけど、私はこれでも十分だ。
「春千夜は過保護だなぁ」
スマホを見ながら呟いて笑う。
散々危ない目にあったわけだし、春千夜が過保護になるのも分かる。
生徒会室の前で、誰か立っている。
「あれ? 春千夜? どうしたの?」
「一緒んとこ帰んなら、お前といた方が楽だろ。お前すぐチョロチョロどっか行くからな」
「失礼な。私そんなに落ち着きない?」
何も言わずに頭をくしゃりと撫でられた。
「行かねぇのか?」
生徒会メンバーのように、またしても当たり前のように言って、私より先に入って行く。
会長を始め、他のメンバーがギョッとする。
「ねぇ、春千夜。他の子達が怖がっちゃうから、万次郎達といて。連絡するし」
現に、春千夜を見て特に下級生が怯えてしまっている。
春千夜はメンバーを見回して、私を見る。
「じゃ、後でな」
頭を軽く撫でられ、春千夜は生徒会室を出て行った。
「三途君て、あんなに素直に人の言葉を聞くんだな……」
「まぁ、人によるかな。万次郎の言う事は無条件に聞くし、それ以外の人にはすぐ噛み付くから」
「じゃぁ、佐野君とさんは特別なんだね」
「ははは、そうかな」
確かに、他の人よりは甘やかされてると思う。だけど、さすがに万次郎には勝てないと思う。
春千夜の中の優先順位は、私より万次郎の方が上だろうから。
生徒会室に夕日が差す頃、仕事を終えた私はスマホを手にした。
春千夜へ連絡を入れると、短く「そこにいろ、すぐ行く」とメッセージが入る。
会長に挨拶をして、廊下で春千夜を待つ。
廊下の窓を開けて、胸から上を外に出して空を見る。
「落ちんぞ」
後ろから包むみたいに立つ春千夜を、顔だけ上に上げて見る。そのまま後頭部を春千夜の胸に預ける。
手を伸ばすと、ピクリと動く。
「喧嘩したの?」
「あ? してねぇ」
「嘘つき」
マスクで傷を隠しているつもりでも、拭き切れていない血が色んな場所に残っている。
「血の気が多いね、春ちゃんは」
「ちゃん付けで呼ぶな。俺は女じゃねぇ」
そんなの知ってる。