第4章 それでも傍に
今まで誰に好きと言われても、正直あまりピンと来なかったのに、春千夜の言葉は何処か少し違ってて、悪い気がしなくて、くすぐったい。
「春千夜と一緒にいたら、好きって気持ちが分かる? 春千夜を好きになれる?」
不確かな感情が、胸を締め付ける。
苦しい。
こんな中途半端な感情は、絶対よくない。
そう思うけど、春千夜を好きになる道には興味があって。
「お前は、どうしたい?」
腰に手を当てて、引き寄せられる。
顔が近づいて、長いまつ毛が動いて目が細められ、綺麗な瞳が揺れる。
吸い込まれるように、飲み込まれるように自然と口が開く。
「春千夜を、好きになりたい」
唇が食べられるみたいに、口付けられる。
それを拒む事はなくて、自分からも差し込まれた舌に舌を絡める。
「……下手くそだな……」
意地悪く笑う春千夜を、煽るように笑う。
「っ、はぁっ……じゃぁ……春千夜が、教えて?」
「っ!? クソっ……テメェ、それワザとかよ……」
恋もその先も、彼に身を委ねてみるのも、悪くはないと思ってしまった。
私は既に、彼の元に落ちてしまったのかもしれない。
長い口付けに、息が上がって、体が妙に熱い気がする。
「エロい顔してんじゃねぇよ……ブチ犯すぞ」
「春千夜は怖いなぁ、もう……。もっと優しく甘い言い方出来ないの?」
「甘いって何だよ」
「うーん……ドラマとか少女漫画とかで見るような?」
「……俺が言ってんの想像出来るか?」
春千夜が心底嫌そうな顔をするけど、私は考えてみている。
別に悪くはないと思うけど。あんまり詳しくはないけど。
「あ、クラスの女子が話してた、何だっけ……えっと、オラオラ系男子? ドS男子? みたいなやつなら、春千夜いけるんじゃない?」
「何だそりゃ」
私が言うと、眉を潜めて春千夜はスマホを取り出す。
盗み見ると、調べているようだ。こういうところが春千夜の可愛い所なんだと思った。
調べる内容が内容だからか、それをこんなにも真剣な顔でと思うと、何とも言えない気持ちになって、抱きしめて髪をくしゃくしゃとしたくなる。
「春千夜って、勉強熱心だね」
「あ? 気になったままじゃ、気持ち悪ぃだろ」
スマホを仕舞い、春千夜は私の手を取る。