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君中毒【東リべ夢】〘三途春千夜夢〙

第4章 それでも傍に




血の付いた手が私の頬の近くで、触れる寸前で止まる。

一瞬、自らの手を見て眉間に皺が寄る。

何を考えたか手に取るように分かる。多分、倒れている男達の血が付いた手で、私に触れるのが嫌なのだ。

私はその手をしっかり握って、自分の頬に当てた。

「春千夜、助けに来てくれて……ありがとう」

私は笑った。つもりだった。

泣きそうな、辛そうな顔の春千夜が私を力一杯抱きしめた。

視界がボヤけて、世界が歪んで見える。上手く言葉が出なくて、子供みたいに私は泣いていた。

母に刃物を向けられた時ですら、涙なんて出なかったのに。また彼の前で泣いてしまった。

単純に弱くなったのか、彼の前だからなのか。

泣く私の背中を優しく撫でる春千夜は何も言わない。

少しして体が離れると、私の体が持ち上がる。

「わっ!」

突然横抱きにされ、咄嗟に春千夜に抱きつく。

そこまで小さくもなく、華奢でもない私を軽々と持ち上げてしまう。

細くて繊細そうな見た目でも、やっぱり男なのだと改めて思う。

そのまま歩き出す春千夜に、私は急いで声を掛ける。

「ま、待ってっ! まさかこのまま帰るつもりっ!?」

「何か悪ぃのかよ」

「お、下ろしてっ! 重いからっ!」

「あぁ? 重くねぇよ」

キレ気味に言われたけど、いくら外がもう暗いとはいえ、さすがにこの状態で外を歩くのは困る。

何とか抵抗し続け、春千夜が仕方なく私の説得に応じてくれて、下ろしてもらう。

私はハンカチで春千夜の手に付いた血を拭き取る。

やっぱり嫌がったけど、構わず続ける。

気づいたら、春千夜と二人になっていた事に驚く。全然気づかなかったけど、いつの間に会長や万次郎達がいなくなっていたんだろうか。

とりあえずこの場から離れたくて、二人でその場を後にする。

私と春千夜の手はしっかり握られている。

「そういえば、何であそこが分かったの?」

「あのメガネが、泣きそうな声でマイキーに電話して来たんだよ」

仲がいいと言うより、万次郎が会長にちょっかいを掛けているイメージだったのに、番号を交換しているとは知らなかった。

「会長にも万次郎にもドラケンにも、ちゃんとお礼言わなきゃだね」

チラリと私を見た春千夜の視線に、私は笑う。
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