第4章 それでも傍に
男に拘束される。
「あの女みたいな男のせいで、むしゃくしゃしてたから、丁度いいわ」
「さぁ、ビッチちゃん、君は俺等といこっか」
女の私が抵抗しても意味はなく、非力な自分に涙も出ない。
そのまま、近くにある使われていないであろう、工場に連れて来られる。
彼等の溜まり場なのか、ソファーや机や椅子、小さな簡易ベッドが置かれている。
今更になって、凄く怖くなって来た。
「あれれー? 震えちゃってんのー?」
「かっわいー」
ガラの悪い男達に囲まれ、体が震え出す。
毎日万次郎達といて慣れているとはいえ、彼等みたいに優しい人達とは違うから、さすがに怖い。
どうやって逃げようか考えていると、手首を掴まれて簡易ベッドに投げられた。
その拍子に腕を打ってしまって、顔を顰めた。
「誰も助けに来ないんだし……君も楽しんだ方が楽だよー」
「お前等、しっかり体押さえてろ」
男達に手脚の自由を奪われ、ますます逃げるのが困難になってしまった。
これは非常にマズい。
「おい」
「ああ?」
声がした方を振り向いた男が、物凄い金属音の後に倒れる。
ザワつく男達が、吹き飛んだり倒れたりと、次々と私の体から離れていく。
無言、無表情。
ただ、男達の呻きと助けを乞う声が悲しく響いた。
鉄パイプのような物を、男達に叩きつけていたのを離し、素手で殴り始める。
目の前で繰り広げられる光景は、目を背けたくなるような、お世辞にもいい景色とは言えないのに、私は胸が高鳴っていた。
もちろんその光景ではなく、暴れ回る彼から目が離せない。
「さんっ! 大丈夫かいっ!?」
「会ちょ……」
「怪我はない?」
「あ、はい……すみません……」
思考の処理が追いつかない私に、会長が優しく声を掛けてくれる。
どうしてだろう。体の震えは止まっていて、私はいまだ男を殴り続ける人から目が離せない。
「春千夜、もうやめろ」
「あ? るせぇよ、テメェも死にてぇのか?」
「俺に当たんな。お前が今する事は、もっと他にあんだろ」
止めに入るドラケンから目を離し、彼の目が私を捉える。
男に跨っていた春千夜が、立ち上がってこちらに来る。
早鐘を打つ心臓。胸の前で自らの手を握る。