第1章 01
彼の名前はイルミ=ゾルディックと言うらしい。
彼は外人さんだった。
「じゃあ、イルミ君」
「イルミでいい」
「じゃあ、イルミ。貴方が貴方の世界に帰れるまで、此処で一緒に生活しましょ?」
「うん」
あまりにもあっさり首を縦に振るイルミにニッコリ笑って、これからよろしくねと告げると、「よろしくミコト」と可愛らしい返事が返って来た。
「それにしても、ミコトでかいね。身長何センチあるの?」
至って私は女性の平均身長だ。
でも、そう言われるのは少し嬉しかったりする。
まぁ、イルミからみたら、まだまだ、私がでかく見えるのかもしれないと、
「そう?でも、158cmよ。きっとすぐにイルミに抜かされちゃうわ」
と答えると、黙り込むイルミ。
「おれ、185cmあるんだけど」
えっとこれは冗談なのか、理想なのか。
どう答えていいのか解らない。
正直子供の接し方ほど難しいモノはないと思うのだ。
「あはは、そうなんだ…えっとーでもイルミはまだ子供だから」
と言葉を選んでいると「俺もう24なんだけど」とか聞こえてきた。
「何食べたい?お腹すかない?」
とキャッチボールを拒否してしまった。
ダメだろ私!!!
「じゃあ、オムライス」
別段私の無茶な話の切り返しを気にするわけでもなく、淡々と答えてくれるイルミに感謝した。
オムライスを作りながら、やっぱりまだまだ子供だと安心した。
「イルミーオムライスできたよー」とリビングに戻ると、ベランダの前から動かないイルミが目に入った。
外に何かあるのかと机にオムライスを置いてイルミに近づくと「ミコト」と私の名前をポツンと呼んだ。
「俺、子供に戻ってる」
「え?」
「まぁ、いいか」
「え、え?」
「オムライス出来たんでしょ、早く食べよう」
「あ、う、うん」
何事もなかったかのように席に着いて私を待っているイルミに私も気にしないことにした。
オムライスを無表情で食べるイルミに口に合わなかったのかと心配になったけど、全部完食してくれたのでいいとしよう。
ごちそうさまと食べ終わったものをシンクまで持っていくイルミの頭を偉い偉いと撫でてやる。