第6章 侍女×宰相
「フレイア、お待たせ」
なんとその場に現れたのはフレイアの恋人だった。そして、もう一人男の人がいる。
「シェリー、彼はダーリンの友達なんだけど、良かったら話してみて!それじゃ!」
「えっ…フレイア!?」
イチャイチャし始めたカップルは、こちらの話を聞かずに去っていく。
ぽつんと残されてしまったのは、はじめましての二人だった。
どうやらお相手は騎士のようで、生傷の多い腕をしていた。
「あー、えっと。アイツにいきなり連れてこられたんだけど。君、ひょっとして俺の彼女になりたい…とか?」
急に話題を振られてシェリーは慌てて手を振る。
「い、いえ! そんなんじゃありません! フレイアが勘違いしたみたいで…ご迷惑をおかけしました!」
「そ、そっか。なら良かった。俺、今が大事な時期でさ。彼女とか作ってる余裕なくて」
「そうなんですね。頑張ってください!」
彼もその気では無いことにほっとする。
変な期待を持たれていたら後々面倒だから。
そのまま他愛ない話を少しして、昼休みの時間が終わる。
シェリーは気持ちを切り替えて午後も頑張ろう!と政務室に戻ったのだが――
「先程の男は誰ですか」
気がつけば壁際に追い詰められていた。
目の前のジーンは何故か不機嫌で、そんな表情は初めて見る。
「さ、先程の…とは?」
「昼休み、中庭で談笑していた男です」
そう言われ、ついさっき別れたばかりの男を思い出す。
「彼は…えっと私の友人の恋人の友人…です」
間違いではない。
それなのにジーンに強く手首を掴まれていた。
「それで? その男と寝たのですか?」
「…え?」
「浮気とはいい度胸ですね」
「う、浮気!? な、何でですか! 私はジーン様にフラれたんですよ!?」
「…えっ?」
ジーンが目を見開く。
「フラ…れた? 私があなたをフったと言うのですか…?」
「そ、そうです。つ、妻になる人としか最後までしないと言ってたではありませんか…」
「言いました。だから少し待ってて欲しいとお願いしたではありませんか!」
…………え?