第6章 侍女×宰相
翌日―――
シェリーはフレイアに言われたことを思い返していた。
確かに三年も侍女をしていたら、何かハプニングがない限り進展はしなさそうだ。
とはいえ…
『だからぁ、紅茶を宰相の…できたら股間にかけるのよ!で、拭きますぅ〜って言いながら触りまくるの!』
フレイアの馬鹿げた提案は却下だ。
ジーンの性癖がわからないのに、いきなり股間を触りまくる女なんて有り得ないだろ。
「でも…紅茶は使えそうかな…」
ティーカップを運ぶ自分。
足元がフラついて倒れそうになったところを「危ない!」とジーンに支えられる。
そして寄り添った二人はキスをする…
「うふふ。良いかも」
誰もいない給湯室でシェリーはニヤつくと、急いで政務室へ戻るのだった。
政務室では相変わらず真面目に働くジーンの姿が。
若くして宰相になるだけあって、仕事は的確で早い。
そんなジーンの邪魔をするのは心が痛むが…
や、やるしかないわ!
シェリーはぐっと力を入れると熱々の紅茶を淹れたティーカップを手にする。
イメージどおり…イメージどおりにやれば…
そんな風に力み過ぎたせいか、予定の場所よりかなり前で、しかも何も無いところでシェリーはつまづいてしまう。
「えっ…きゃぁぁ!」
慌ててバランスを取ろうとしたせいで身体は変な方向を向き、投げ出されたティーカップから零れた紅茶が舞う。
当然ジーンが間に合うはずもなく、シェリーは派手に転んでしまっていた。
「シェリー! 大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄ってきてくれたジーン。
シェリーは恥ずかしさで顔を上げられなかった。