第6章 侍女×宰相
とある国の
とあるお城の
とある政務室。
「シェリー、紅茶を用意してくれますか」
宰相であるジーンに声をかけられ、シェリーは笑顔で返事をした。
国を支える宰相。
若くしてその座に就いたジーンは多くの女性から慕われている。
そんな人の侍女になれるなんて、数々の女の戦いを勝ち抜いて良かった!とシェリーは小さくガッツポーズした。
今回のストーリーは『侍女×宰相』である。
下心満載のシェリーだったが、そんなことは表情にも出さず、ジーンの机の隅にティーカップを置いた。
「あぁ、ありがとう。やはりシェリーの淹れる紅茶は美味しいですね」
「もったいないお言葉をありがとうございます」
ジーンは緑色の髪を後ろで結んでいる。
それを結うのもシェリーの役目だった。
唯一ジーンに触れられる特別な時間。それを毎朝こっそり楽しむのがシェリーの日課だ。
それに、ジーンはシェリーの淹れる紅茶を好いてくれている。
それだけでも胸がいっぱいになるが、シェリーとしてはもっとお近付きになりたかった。
***
「まーた、進展なしなのぉ?」
同じ侍女で親友のフレイア。
彼女は騎士の恋人がいるため、ジーンに興味のない珍しい人物だった。
そして、何でも話を聞いてくれる、数少ない相談相手である。
しかし、シェリーの報告を聞く度に、がっかりした声をだしていた。
「もっとさぁ、胸を強調したり。倒れて唇奪ったり…そういのないの?」
「あ、あるわけないでしょ」
「侍女になって三年経つのに、紅茶を喜んでくれたって報告…いい加減聞き飽きたわ」
「うっ…それはすみません…」
フレイアの言うことも最もだった…。