第4章 孤児×王子
「……。シェリー」
ん…誰…?
「シェリー。貴女の力は誰にも知られてはいけませんよ」
女の人の声がする。
だが、シェリーはぼんやりとした意識の中、目を開けられずにいた。
「いいですね? 約束ですよ」
念押しするような声音。
私の力?
一体なんの事かわからないまま、頭が真っ白になってゆく――
***
「シェリー!」
呼ばれて慌てて振り向くと、腰に手を当ててこちらを見ている少女がいた。
彼女は…
「ミーナ。どうしたの?」
そうだ。彼女はミーナ。
この孤児院のお姉さん的存在の少女だ。
「どうしたのじゃないわよ、掃除は終わっ…てないようね?」
「…あっ」
箒を手にしたまま突っ立っていたシェリー。
女の人に呼ばれ、何かを念押しされていたような気がするが、夢だったのだろうか。
「ごめん、すぐ終わらせるね」
「もう、しっかりしてちょうだい」
ミーナはぷくっと頬を膨らませる。
「最近、王都で流行っている病のせいで貴族からの支援が滞っているのよ? 孤児院の畑を広げるには働き手が必要なんだから、ぼーっとしてないでよね」
「うん、まかせて」
シェリーは慌てて掃除を再開する。
そうだ、この後はミーナと畑を耕す約束をしていたのだ。
急がないと日が暮れてしまう。
ボロボロの服に、ボロボロの箒。
孤児院の娘、それがこのストーリーのシェリーだった。