第3章 伯爵家の令嬢×兄の友人
断るべきなのでは?
そう思ったが、口が勝手に「はい」と返事をしていた。
シェリー自身が変えることのできないストーリーということだ。
つまり、レオン様は『兄の友人』なの!?
パタン、とドアが閉じられる音を背後で聞き、もう逃げられないと覚悟する。
レオンの部屋も絶やさず暖炉に火があるおかげで暖かい。
「シェリー、こっちへ」
暖炉の前に立つレオン。
初めて名前を…しかも呼び捨てで…。
私ってば、どうしちゃったの?
胸が痛いほどにドキドキしている。
自然と期待しているのだ、これから起こることに――
吸い寄せられるようにレオンの目の前に立つ。
今までより近いその距離感に、シェリーは抱きつきたくなるのを必死に我慢する。
「シェリー」
「はい…レオン様」
うっとりと、レオンを見上げる。
するとレオンはニヤリと笑った。
「あぁ、その顔だ。俺が欲しくてたまらないって顔してる」
「…っ!?」
嘘…!?
そんな顔していた!?
思わず両手で顔を押さえそうになるが、それでは肯定しているようなものだ。
冷静を装い、シェリーはレオンを見つめた。
「レオン様、何をおっしゃって…」
「俺を初めて見た時も、食事の間も。俺が欲しかったんだろ。ロンに聞いていた『天使のような妹』とは印象が違うな」
くいっと顎を持ち上げられ、わずかに顔が近くなる。
それだけでシェリーはドキッとしていた。
「なぁ、素直になれよ。そしたら可愛がってやれるぜ?」
クールでシェリーに興味のない男、レオンはそんな印象だったが、今ではどうだろう。
急に妖艶な雰囲気をまとい、シェリーを魅惑の世界へ落とそうとしているではないか――