第3章 伯爵家の令嬢×兄の友人
ロンバードとレオンの話はとても面白かった。
と言っても主にロンバードが話しているだけだが。
学園での出来事はまるでおとぎ話のようで、シェリーは目を輝かせて聞いていた。
「―――ん? もうこっちのワインはないか」
そう言ってロンバードは新しいワインを開ける。
兄がこんなにお酒を飲むのを初めて見たため、少し驚いてしまったが、それでも楽しそうだ。
「ロン、飲みすぎだ」
「まぁまぁ。これで最後にするから」
再びグラスにワインが注がれ、ロンバードはごくりと喉を鳴らす。
シェリーは最初の1杯だけ飲み、あとは水を飲んでいた。
兄と違い、お酒はあまり得意ではない体質らしい。
「それで、魔獣退治訓練の時のレオンがぁ…」
呂律の回らなくなってきたロンバード。
グラスをテーブルに置くと、そのままソファで眠ってしまった。
「お、お兄様? ベッドで寝ないと風邪を引きますわよ」
揺すっても起きないロンバード。
このままだとマズイと思って執事を呼ぶか考えていると、ふわりとロンバードの身体が浮いた。
「…えっ?」
ロンバードはそのままベッドへと運ばれ、更にはシーツをかけられ、満足そうに夢の中へ落ちていった。
「まさか、レオン様の…魔法ですか?」
先程ロンバードが自慢げに話していたのを思い出す。
レオンは魔法も武術も剣術も学園でトップクラスなのだと。
つまり、寝てしまったロンバードを運ぶことなど、朝飯前なのだろう。
「あぁ。別に魔法なんて珍しくないだろ」
「そう、ですけど。私は不得意で…」
まるで二人きりのような状況に、シェリーは焦っていた。
急に胸が高鳴り、ドキドキとうるさい。
「では、私は自分の部屋にもど…」
「俺の部屋に行くぞ」
言葉を遮られ、不意に手を掴まれる。
シェリーの胸は更に高鳴っていた――