第3章 伯爵家の令嬢×兄の友人
そしてそれから更に数日後――
未だに雪が振り続ける景色を眺め、シェリーはぼーっとしていた。
雪が降っているのに月が見える、そんな不思議な夜空だ。
「シェリー様。もうお休みの時間です。それに、窓のそばはお身体を冷やしてしまいますよ」
「うん。ありがとう」
侍女に促され、ベッドに潜り込む。
あとどれくらいで現実に戻れるのか。
いや、もうこっちが現実のような気がしてきている。
感覚がおかしくなりそうだ、と目を瞑る。
そしてそれから一時間程経過した頃、コンコンとノックの音でシェリーは目を覚ます。
まだ夜は深い。
誰が来たのだろうと体を起こした時、ドアが開く。
姿を現したのは兄、ロンバードだった。
「シェリー、もう寝てた?」
「平気です。お兄様…」
「ははっ。寝てたって顔してる。課題が終わったから、良かったら俺の部屋で話さない?って誘いにきたんだけど」
「ほ、本当ですか!」
眠気が一気に吹き飛ぶ。
伯爵令嬢であるこのシェリーは昔からブラコンだ。
この冬休みも兄の帰宅を楽しみにしていたのに、全然構って貰えなくて拗ねていたほどだ。
「俺の部屋に赤ワインを用意してある。ちょっとだけならいいだろ?」
「もう、お兄様ったら」
シェリーはクスクスと小さく笑い、兄の腕を取ると兄の部屋へと向かった。
今夜はロンバードを独り占めしてやる。
そう意気込んでロンバードの部屋へ行くと――
「レ、レオン様…!?」
そこには意外な人物、レオンがいた。
しかも既にワインを飲んでいるようだ。
「あ、ごめん。言ってなかったね。三人で飲もう」
「え、えぇ」
兄だからと薄着でいたが、本来人前に出る格好ではない。
この兄は鈍いのか…。
着替えを、と思ったがレオンは全く気にしている様子はなく、シェリーの方を見ようともしない。
……なんだ。
やっぱり気にしているのは私だけなのね。
シェリーはガッカリしつつ、促されたソファに腰を下ろしていた。