第3章 伯爵家の令嬢×兄の友人
それから三日経っても、五日経ってもレオンとの進展は無かった。
窓の外は雪が降り続き、高々と積もっている。
屋根の上の雪は魔法で溶かし、近くの大きな川に流しているようだ。
おかげでのんびりと雪が降る景色を楽しむ事ができている。
「……って、違うじゃない!」
シェリーは頭を抱える。
どういうこと?
『兄の友人』がレオンでないなら、そろそろ本物が現れてもいいのでは!?
シェリーは普通に伯爵家の令嬢として一週間過ごしてしまっている。
パチパチと燃える暖炉のおかげで部屋は暖かい。
だが、この生活は何かが物足りなかった。
「そう、足りないのよ!」
刺激が!!
と心の中で叫ぶ。
レオンは課題が忙しいのか、常にロンバードの部屋にいる。
また、レオンに用意された部屋はロンバードの隣の部屋のため、すぐ隣を行ったり来たりしている状況らしい。
おかげで廊下でばったりすれ違う、ということもない。
姿を見かけるのは食事の時だけだった。
しかし、食事は家族全員いるため、個々の特別な会話はなく終了する。
本当はもう一人兄の友人が来る予定だったけど、雪で来れなくなったとか?
でもそんなことあるかしら。これは魔法書のストーリーよ?
ストーリーが天候ひとつで全てが台無しになるなんて考えられない。
とはいえ、目的の『兄の友人』に会えないのであれば、現実に戻りたかった。
しかし、どうやって戻るのかわからず、シェリーはただ伯爵令嬢として日々を過ごしていくしかないのだ。
前回のストーリーでは彼と満足いくまで…楽しんで、そこから眠るように意識を飛ばし、気がついたら現実に戻っていた。
「まさか、また彼とシないと戻れないなんてこと…ないわよね?」
もしそうなら絶望的だ。
早く『兄の友人』が現れてくれることを願うばかりだった。